こんにちは。心理士の亀山です。12月になり、街のクリスマスの飾りつけをよく見るようになりました

活気が出て、いいですね

前回は“自分でできる対処法” (11月16日更新)と題して、「うつ病かな」と思ったときに、まず自分で行える対処法についてご紹介しました。色々と書きましたが、“
リラックスして肩の力を抜くことが大切”という内容でした。
と言うのも、うつ病になると、思考の内容が悲観的、否定的となり、自己評価の低下や自責感を招き、大きなストレスを感じやすいのです。
若い女性の事例でみてみましょう。
彼女は、対人関係に悩み、自分に自信がなく、友人に批判されはしまいかと絶えず怯えていました。彼女は、パーティーの後で、「ちゃんと部屋を片付けてはどうか」と友人に言われてしまいました。その時「私は友人から嫌われている。私には本当の友達がひとりもいない」という考えが浮かび、落ち込んでしまいました。
この事例は、抑うつ的な認知過程の典型例です。ものごとを白か黒かのどちらかで考え、少しでもミスがあれば、完全な失敗と考える傾向が表れています。
この物事を否定的に考えてしまうことに注目したのが、アーロン・ベックという人です。ベックは、うつ病の背景には、否定的な思考パターンがあると考えました。
多くの人は、悩みをもたらすのは、嫌な出来事そのものだと考えています。例えば、上の事例の女性は、「友人は小言がうるさい人だ。でも、それは自分ではどうしようもない問題だ。私は我慢するしかない」と考えて、諦めてしまうかもしれません。
しかし、ベックによると、実際には、悩みを生み出すものは出来事そのものでなくて、その出来事に対する受け取り方です。だから、嫌な出来事は変えられなくても、認知の仕方、否定的な思考パターンを変えれば悩みは軽くなって、気分もよくなると考えられるのです。
さて、では、なぜうつ病になると否定的な思考パターンとなるのでしょうか。人によって色々な理由があると思いますが、今回は脳科学の視点からこの問題をみてみましょう

うつ病になると、脳の右の前頭葉の活動が過剰となり、左の前頭葉の活動が相対的に低下することが知られています。これまでの研究から、
右の前頭葉=
否定的で批判的な考え方や非寛容的な姿勢と関連する左の前頭葉=
楽観的で肯定的な考え方と関連すると考えられています。このように、うつ病になると、脳の働きの面から見ても、否定的な思考パターンをしやすくなっていることが知られています。
しかし、その人にとって、「脳」の問題がどの程度関与しているかは、個人によりけりです。例えば、脳こうそくの後に生じるようなうつ状態は、より「脳」の問題の関与が大きく、失恋の後に生じるようなうつ状態は、より「心」の問題の関与が大きいと考えられます。
今年も残りわずかとなりましたね

年末に向けご多忙のことと存じますが、健康にお気をつけてお過ごしください。
引用文献・参考文献 Burns, D.D. (1980). Feeling good-The new mood therapy. (野村総一朗・夏刈郁子・山岡功一・成瀬梨花(訳) 1990 いやな気分よ、さようなら-自分で学ぶ「抑うつ克服法」 星和書店)
『こころのりんしょう a・la・carte』第29巻第4号(No.124) 2010年12月25日発行 星和書店
北村俊則ほか 抑うつの現代諸相-心理的・社会的側面から科学する- (2006). ゆまに書房