こんにちは。心理士の井上です。
同じ出来事に対して、人それぞれ受け止め方が異なります。そして、そこには“自動思考”という考え方のクセのようなものがあることを紹介しました。
これまで、その自動思考の中で、“全か無か的思考”と“過度の一般化”について紹介させていただきました。
今回はさらに別の自動思考を紹介させていただきます。
今日紹介するのは“選択的抽出化”というものです。
全体の中のある1点だけに注意が向かい、その他の側面を無視する自動思考を“選択的抽出化”と言います。
気分が落ち込んでいると、自分の悪い面だけに注意が向かってしまう悲観的な選択的抽出化となりがちです。
「仕事でミスをしてしまった。辞めさせられるだろう。」
極端な例ではありますが、それまでどんなに成果をあげていたとしても、注目しているのが目の前のミスだけになってしまって、最悪に事態に考えが向かってしまいます。
「人から注意された。僕はダメな人間だ。」
自分にとってのマイナスな体験が、あたかも自分の本質であるかのように自分にレッテルを貼ってしまいます。
特別なメガネをかけて、世の中や自分のポジティブなことや明かることを見えなくしてしまうようなものですね。
そのメガネをかけたままだと、意識に上がってくることはネガティブなことばかりになります。そしてこのようなフィルターがかかっていることに気づかないと、世の中全体が暗闇のように感じられるかもしれません。
このような思考から抜け出すにはどうすればいいでしょうか。
特別なメガネ(フィルター)をかけていないか検証することが必要です。
その出来事に対する他の見方はないだろうか、と思いを巡らせてみるのです。
もしかしたら、そのミスは、仕事のシステムの中に問題点を見つけ出すヒントになっているかもしれません。
もしかしたら、注意した人はあなたに期待をして言ってくれたのかもしれません。
同じ出来事の捉え方は多面的です。
ここで注意してほしいことは、他の見方を探すというのは、選択的抽出によるネガティブな思考を否定するということではないことです。
ネガティブな見方も、出来事の理解の仕方(思考)の一つです。
それを否定せず、別の方向から光を当てると、どんな考え方があるかを探してみるイメージです。
新たな見方を見つけることができると、気持ちが少し楽になるかもしれません。
ネガティブと思われる出来事に出会ったら、一度考えてみてくださいね。
過ごしやすい気候になりましたが、朝夕はまだ寒い日もあります。どうぞお体にはご自愛ください。
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