fc2ブログ

0512345678910111213141516171819202122232425262728293007

<認知行動療法②>

こんにちは。心理士の井上です。

 前回は認知行動療法の目的をお話しさせていただきました。

 ある出来事が起きると自動的に湧き上がる思考(自動思考)によって、苦しくなったり、つらくなったりして、その後の行動にも影響が出てしまうことがあると思います。

認知行動療法は、この流れの中で“認知”や“行動”に働きかけ、バランスの良い思考や行動に変えていくことを目的としています。

では、どのように働きかけていくのでしょうか。

前回の例をもとにお話しさせていただきます。

【例】
友達にメールをしたが返信がこない【出来事】
        ↓
嫌われているかもしれない【認知(自動思考)】
        ↓
悲しい・情けない・寂しい【感情】
外出しなくなる【行動】

ここで、感情を自分の感覚で数値化します。

上記の例では、
悲しい(70) 情けない(60) 寂しい(50)

これは感覚で大丈夫ですし、それぞれ最高100で評価してみてください。

次に、自動思考を裏付ける事実【根拠】を考えます。

例えば、
メールしてから、もう3時間になるが連絡がこない。【根拠】

次に、自動思考とは反対の事実【反証】はないかを考えます。

例えば、
 仕事が忙しくて、返信する時間がないのかもしれない。
 もともと返信の早い人ではないのかもしれない。

このよう【反証】を立て、次にバランスの良い思考【適応的思考】を考えてみます。

例えば、
 返信が遅いのは気にはなるが、仕事や用事など何か事情があるのかもしれない。
 早く返信がほしいというのは、こちらの都合だから、相手のペースも配慮するべき。

そして、最後に【今の気分】をもう一度自分の感覚で数値化してみます。

悲しい(60) 情けない(50) 寂しい(30)

自動思考を見つけた後に、【根拠】⇒【反証】⇒【適応的思考】と考えてみると、多くの場合【今の気分】でつらかった気持ちは少し落ち着きます。

このように考え方を見直す方法を認知再構成法と言います。

最初は文字にしてみると、その流れがよくわかると思います。

よろしければ、試してみてください。


暑い日が続いておりますが、どうぞお体にはご自愛ください。
スポンサーサイト



【 2018/06/30 】 未分類 | TB(0) | CM(0)

<認知行動療法①>


こんにちは。心理士の井上です。

 これまでいくつかの“自動思考”についてお伝えしてきました。

 良いか悪いか、正解か不正解かのように極端な思考のどちらかになってしまう“全か無か思考”、一度の失敗ですべてがダメだと思ってしまう“過度の一般化”、全体の中でマイナスな点に注目してしまう“選択的抽出化”、ネガティブな責任はすべて自分のせいだと考えてしまう“自己関連付け”を紹介させていただきました。

 私自身、自分の思考を書き出したことがありますが、これまでにどの自動思考も体験したことがあります。場合によっては、その自動思考によりとてもつらい思いをしたこともあります。皆さんはいかがでしょうか。

 今日は、認知行動療法の目的をもう一度お話ししたいと思います。


 ある出来事が起きると、それを“認知”します。“認知”とはその出来事の受け止め方や考え方のことを言います。この“認知”によって、感情が湧きあがり、ときには体調や行動にも影響を及ぼすことがあります。そして、その“認知”の中に、瞬間的に自動的に湧き上がる思考があります。それが自動思考です。

例をもとに流れを整理してみましょう。

友達にメールをしたが返信がこない【出来事】
        ↓
嫌われているかもしれない【認知(自動思考)】
        ↓
悲しい・情けない・寂しい【感情】
外出しなくなる【行動】

認知行動療法は、この流れの中で“認知”や“行動”に働きかけ、バランスの良い思考や行動に変えていくことを目的としています。

ここで、注意したいことは、“認知行動療法はマイナス思考をプラス思考にすることが目的ではない”、ということです。

 例としてよく紹介されていますが、コップに半分入った水をどう捉えるかを考えてみましょう。

“半分しか入っていない”と考える場合、少し不安になるかもしれません。

“半分も入っている”と考える場合、安心できるかもしれません。

なんとなく、“半分も入っている”と考える方が、プラス思考で、気分が楽だと考えがちです。

しかし、この思考は場面によっては問題があります。

例えば、断水していて水の供給が止まっているときはどうでしょう。

“半分もある”と思って、水を飲んでしまえば、あとでたいへんな思いをするかもしれません。

 こう考えると、プラス思考が必ずしも良いとはかぎりませんよね。

大切なことは、自分の認知がどれだけ現実的かを判断することです。

そして、現実的でバランスのとれた考え方ができるようになることが、認知行動療法の目的ということになります。

 次回は自動思考にどう働きかけていくかを紹介したいと思います。

暑い日が続いておりますが、どうぞお体にはご自愛ください。

【 2018/06/04 】 未分類 | TB(0) | CM(0)