こんにちは。心理士の井上です。
前回は情動コントロールについて、脳科学の観点からお話しさせていただきました。
悲しみ、嫌悪、怒り、喜び、恐れ、驚き、などの情動は、人間らしい生活を送るのに必要なもので、脳内の原始的な部位である“偏桃体”がつかさどっています。
そして、額のあたりにある“前頭葉”が、その感情をコントロールする役割を担っていました。
偏桃体で湧き上がる感情を、前頭葉が場に適切かどうかを評価して、コントロールしていることになります。
思わず笑みがこぼえれそうな喜びの感情が湧きあがってきても、その場が笑ってはいけない状況であれば、笑わないようにするでしょうし、強い怒りの感情が起こっても、それをそのままどこでもだしてしまうようなことはしないと思います。
これらが何らかの形で障害されるとどうなるかは予測できると思います。
前頭葉に障害が起きてしまうと、情動のコントロールそのものが難しくなってしまい、抑制ができず、暴力的になってしまうことがあるかもしれません。
偏桃体に障害が起きると、恐怖を感じなくなってしまい、一般的に危険だと思われることを平気でしてしまったり、喜びや楽しさも感じなくなってしまうことがあるかもしれません。
また、前頭葉や偏桃体に障害が起きていなくても、前頭葉と偏桃体との情報のやり取りが阻害されることも起こりえます。
前頭葉とと偏桃体の情報のやり取りというのは、別の言い方をすると“心の葛藤”であると言えます。
「~したいけれど、してはいけない」
「~したくないけれど、しなくてはいけない」
これらは、「~したい(したくない)」という情動を持ちながら、それを「してはいけない(しなくてはいけない)」と調整していることになります。
前頭葉と偏桃体の情報のやり取りが阻害されるということは、この心の葛藤がしにくくなります。
多くの場合、情動はないものとされてしまい、理性的な前頭葉の働きが前面に出てきてしまいます。
そうなると、ないものとされた情動が予想できないタイミングで爆発するような現象(いわゆるキレる)ことが起こるかもしれません。
葛藤するということは、情動コントロールという観点からもとても大切なことということになりますね。
毎日本当に暑い日が続いておりますが、お体にはご自愛ください。
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